新型コロナウイルスが巷を賑わせ、皆がウイルスの本を読む中、細菌についての本を読んだ。
ウイルスは、宿主である細胞を持つ生物に寄与しないと増えることができない。だが、細菌は微生物であり、ウイルスとは異なる。
細菌と聞いてすぐに思い浮かぶものは、納豆をつくる納豆菌や、私たちのお腹に棲んでいる大腸菌だ。
微生物は世界中に存在する。オランダの微生物学者バース・ベッキングが
"everything is everywhere, but environment selects"
と唱えたように、目に見えぬ小さな微生物たちは世界中を飛び回り、あらゆる場所に辿り着く。だが、環境の違いによって優占する微生物種が異なる。
本書の主役はそんな小さな微生物、それも一般人があまり行くことのないような辺鄙な場所に生きる微生物だ。
では、辺境微生物はどのように発見されるのだろうか。順を追って見ていこう。
まず、研究者はフィールドワークを安全に行うために、ある時はライフル銃、またある時はボート漕ぎの訓練を事前に行わなければならない。
現地に着くと、今度は天候に左右される。著者は、北極では強風のため目的地までの飛行機が飛ばず、南極では湖に氷が張っており採取不可能だったこともあるそうだ。
計画通りに進まないこともありつつ無事に採取できたら、実験室に戻ってシャーレで培養する。それからその16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列を解読する。 データベースにある塩基配列と照合し、一致率が九七%以下なら新種の可能性が高いという。
新種の微生物を発見したらすぐに論文にまとめ、発表する。実験を進めていくうちに新たな疑問が生まれるので、またフィールドへ繰り出す。