毎年発表されるTIME誌の必読書100冊。
今回は、2021年に選ばれた100冊のうち、日本語で読める本を取り上げます。
いじめがテーマの小説。痛いところをつく言葉が印象に残っており、以下の二つの会話文の抜き書きが、今も手元にある。
➤「相手の立場に立って行動しろなんてことを言えるのは、そういう区別のない世界の住人だけだ。矛盾のない人間だけだ。でもさ、どこにそんな人間がいる?いないだろう?誰だって自分の都合でものを考えて、自分に都合よくふるまってるだけなんだよ。みんながそれぞれ自分の都合を邪魔されたくないために、そういう嘘をまき散らしてるだけなんだよ。そうだろ?自分がされたらいやなことなんてみんな平気でやってるじゃないか」
➤「なあ、世界はさ、なんて言うかな、ひとつじゃないんだよ。みんながおなじように理解できるような、そんな都合のいいひとつの世界なんて、どこにもないんだよ。そういうふうに見えるときもあるけれど、それはただそんなふうに見えるというだけのことだ。みんな決定的に違う世界に生きてるんだよ。最初から最後まで。あとはそれの組み合わせでしかない」
こういうグッとくるセリフは、読み返してみても、やはりいいなと思う。
-2022.4.7追記-
ブッカー国際賞の最終候補作に選ばれたとのニュースが。
まず、表紙が可愛い。歴代のカズオ・イシグロの邦訳本の中でも飛び抜けて可愛い。なので読みたいなと思いつつ、消化したい本が多すぎて、まだ手の届かないところにある。AIと人間の話ということしか知らない。TIMEの必読書に選ばれるくらいだから期待していいと思う。読むぞう。
これを読んでおられる社会人の皆さまは、タイトルを見ただけで、うんうんと頷いているのではないだろうか。わたしも、あれほど嫌だった仕事を辞めて、新しい仕事を始めたのに「前のほうがよかった」って思ったし、結局どこに行っても仕事は大変なのだ。読んだことはないので、正確には分からないけど、たぶん転職を繰り返して、その先々で大変な思いをする話じゃないだろうか。ブログの記事には書かなかったが、津村さんの本は、『文芸ピープル』の中でも紹介されていた。多くの女性が社会進出をしている時代だからか、海外でもやはり「女性×仕事」の本はよく読まれるようだ。
*おまけ*
リストの洋書の中で1冊だけ「これは読んでみたい」と思った本がある。Amanda Gormanの詩集『Call Us What We Carry』だ。米バイデン大統領の就任式で朗読した「The Hill We Climb」が収録されているという本詩集は、“パンデミックと全国的な人種差別の反省を踏まえて書かれたもので、闘争と悲しみの中にも、より良い未来への希望が常にあることを思い出させてくれる。”とのこと。邦訳が待ちきれない。