『両手にトカレフ』
軽い気持ちで読み始めて後悔した。これは、単なる娯楽小説じゃない。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』では出てこなかったティーンたちが主人公。帯に「ノンフィクションの形では書けなかった」とあるように、現実の話として受け止めるには、あまりにもシビアな内容。貧困、格差、ドラッグ、ネグレクト、ヤングケアラー...。複雑な事情を抱えた少女が、大切な弟を守ろうと、ひとりでもがく姿に涙が止まらない。
そんな少女が偶然手に取った本は、大正期の日本を生きた金子文子の自伝。金子文子の生い立ちが、少女のそれとよく似ていることで、少女はいつしか金子文子に自分を重ねるようになる。
しかしそれも、母が「壊れて」しまうまでだった。
いつの時代でも、どこの国でも、大人の身勝手でこどもたちが苦しんでいるのだと思うと本当にやり切れない。
本書の登場人物のなかには、そんなこどもを救おうとする大人たちもいる。その中のひとりのように、「あなたはもう何もしなくていいの。見ないふりをせずに、何かをしなくてはいけないのは大人たちのほうだから」とこどもたちに声をかけてあげられる大人に、わたしもなりたい。
関連本:『ヤングケアラー わたしの語り』澁谷智子
「ヤングケアラー」という概念を日本語圏に紹介し、ケアの必要な親をケアする役割を背負わされた子どもたちの存在を「見える化」した著者の労作。