『JK、インドで常識ぶっ壊される』
日本に住んでいたら知らなかったこと、知らなくてもすんでいたことが、インドでたくさん突きつけられて、多感な時期にたくさん吸収するものがあったと思う。
肌の色の話。宗教。カースト制度。ドラッグ。スラムで暮らす子どもたちとの触れ合いを通して、子どもの権利に気づいたこと。
喉がうっと詰まるような話が多かった。それは、わたしもJKの頃、途上国の子どもの支援に興味を持っていた時期があったからで、もし同時期にインドに行っていたら似たような経験をしたのではないかと思ったからだ。
わたしが高校生の頃、職員室の前に貼ってあったJICAのポスターに、アフリカの子どもたちが映っていた。わたしはそれを見て「おなかがでてるから、本当はたくさん食べてるんじゃない?」と冗談まじりに言った。担任の先生が「飢餓状態だと、おなかがぽっこりするんだよ」と言った。
衝撃だった。おなかが出ているイコール肥満という、それまでのわたしの中の常識がぶっ壊された。それからわたしは、貧しい国の子どもたちを救えるなら、と、JICAのプログラムに参加したり、発展途上国の支援をしたりし始めた。
それから一年ほど経った頃、嫌いな塾の先生が、途上国に支援をしてもどうして貧しいままなのかを教えてくれた。
わたしたちがいくら途上国の人々のために募金をしたりしても、その国に届いたら政府関係者たちが取ってしまう。本当に届けなければならないひとには届かない。だから貧しいひとは貧しいままなのだという。途上国の大使館で働いたら(そういうものが懐に入るという意味なのか?)儲かるよ、と先生は言った。わたしはその先生をますます嫌った。わたしはそんな人間になるために、勉強しているのではない。
でも、いくら支援をしたとしても、途上国の貧困はなくならないのだ。事実、そこからわたしは募金も発展途上国の支援もパッタリ辞めた。
今思えば、自分の目で真実を確かめるべきだったと思う。他人の話を鵜呑みにせず。無力なのだと諦めてしまう前に。
『JK、インドで常識ぶっ壊される』は、「ああ、自分のように、世界は変わると信じている子がいる」と、十数年前に信じる心を失った自分を反省しつつ読み終えたのだった。
今回は自分語りが多くなってしまったため、内容をあまり紹介できなくてスミマセン。気になった方は、ぜひ手に取って読んでみてください。
紹介本:『JK、インドで常識ぶっ壊される』熊谷はるか
関連本:『三つ編み』レティシア・コロンバニ
インドの不可触民スミタ、シチリアの文学少女ジュリア、カナダの弁護士サラ。三本の女性の話が、三つ編みのように交差する。インドのカーストの最底辺がどれほど虐げられているのか、本書を読むまで知らなかった。