前半は『子どもたちの階級闘争』の前日談、後半は本・映画・音楽の話が掲載されている、ブレイディみかこ色の濃い一冊である。
わたしがはじめて読んだブレイディみかこの著書は『子どもたちの階級闘争』だった。英国の格差社会を保育士の目線で描いた傑作で、それまで日本の教育格差についての本しか読んでいなかったわたしは動揺した。
本書や『子どもたちの〜』を読めば、それまで抱いていた華やかな英国のイメージは一転する。
彼女がボランティアをしていた底辺託児所では、アンダークラス出身、つまり家庭環境がよろしくない子が多い。それは親のせいというよりもむしろ、英国の政治のせいでもある。
政治が生活に直結しているというのは、日本に住んでいると感じづらい(特に若いひとは目隠しされているのか、楽観主義なだけなのか、投票率が低いのはそのせいではないかと思う)が、国の財政が圧迫されている時、まずはじめに削られるのは弱者に回すべき予算だというのは、どこの国でも変わらない。
日本であれば、出生率の低下が嘆かれているのに、その辺りのサポートが本当に少ない。
わたしも現在、妊娠中の身だが、初回の検診は自腹で約1万円かかり、出産予定費用は一時金では足りず、貯金を切り崩す必要がある。つわりが酷くて入院するひと、働くことがむずかしくなるひともいる。傷病手当が出るといえども、フルタイムで働いて稼げる額には及ばない。
出産でさえ、経済的に余裕がないと大変なのだ。
加えて円安、物価上昇。もし著者に質問できる機会があれば、いまの日本に希望はあるだろうか、と尋ねてみたい。
タイトルにある「オンガク」の話は、UKロックが好きなひとはうんうん頷きながら読めるだろう。詳しくは本書を。
紹介本:『ジンセイハ、オンガクデアル』ブレイディみかこ
同著者の『両手にトカレフ』も先月のブログで紹介しているのでぜひ。