図書館で本を借りると、本の背表紙にだいたい数字が書かれていますよね。
図書館によって表示方法は多少ちがいますが、あれは日本十進分類法(NDC)に則った国内共通の図書館本の分類によるもので『図書館巡礼』は010にあたります。
010が何を指すかというと「図書館・図書館学」。
わたしが最も好きなジャンルです。
本日読み終えた『図書館巡礼「限りなき知の館」への招待』。
内容を少しだけ紹介しますね。
著者は作家であり古書売買史家のスチュアート・ケルズ。
古代から現代、そして想像上の図書館まで幅広く取り上げています。
図書館といえども、その種類は豊富。
口誦伝承の時代に始まり、かの有名なアレクサンドリア図書館、中世ヨーロッパの大聖堂や修道院に付属した図書館、八三〇年頃建設され書物の宝庫だったザンクト・ガレン修道院図書館、寄贈書が押し寄せたヴァチカン図書館、愛書家たちのコレクションによる図書館、大学図書館など。
アレクサンドリア図書館は原因不明だが消滅し、修道院図書館は戦争による破壊や略奪の被害を繰り返し受けたという話や、それまで羊皮紙やパピルスなどでつくられていた巻子本が、一五世紀に広まった活版印刷により紙製の本になったという話も。
活版印刷といえばグーテンベルクが有名ですが、彼は資金不足に陥り借金した挙げ句、印刷機材一式と印刷中の聖書を引き渡し、自己破産してしまったんですね。
個人のコレクションを基につくられた図書館は、日本だと大宅壮一文庫がよく知られていますが、海外だとモルガン図書館やフォルジャー・シェイクスピア図書館があります。
「巡礼」は本の歴史にも及びます。
彩飾写本、インキュナブラ、シェイクスピアのフォリオ、ボルヘスの『バベルの図書館』、トールキンの『指輪物語』、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』、アルベルト・マンゲル、禁書、偽書など。
本当によく調べられていて、一冊に含まれる情報量がかなり多かったです。
さぞかし参考文献も多かろうと思って巻末を見ると載っていない。
その代わり参考文献リストがあるようです。http://www.stuartkells.com/wp-content/uploads/2017/08/The-Library-A-Catalogue-of-Wonders.-Source-notes.pdf
この長さには、著者がこの本にかけた情熱が反映されていますよね。
紹介本:『図書館巡礼「限りなき知の館」への招待』スチュアート・ケルズ
関連本:『図書館 愛書家の楽園』アルベルト・マングェル
図書館と本のはなしが延々と続く。図書館や本が好きな人にとっては至福の一冊。
関連本:『ヴェネツィアの出版人』ハビエル・アスペイティア
本が好きなすべての人に贈る一冊。
(著作権の関係上、書影なし)