直感でビビッときた本は大概おもしろい。本書も例にもれず、ここ最近読んだ小説の中で、ずば抜けていた。
主人公はアフリカと日本のミックスでゲイのジャクソン。彼は職場で、自分らしき人物のポルノ動画が出回っていることを知らされる。撮られた時の記憶はない。いや、うっすらあるような気もする。
ひょんなことからジャクソンは、ブラックミックスのゲイ三人と知り合う。顔立ちの似ている四人は、結束し、動画の出処を探る。同時に、互いになりすまし、ちょっとしたイタズラを実行する。肌の色が似ている。目鼻立ちが似ている。見た目で決めつける人間にささやかな復讐をするのだ。
読んでいてスカッとする反面、ジャクソンたちは、四人ではなく「ひとり」と認識されていることにも気づかされる。性格も私生活も何もかもが違う四人。でも、人々の記憶に残っているのは、ブラックミックスの男という点だけだから。
ぐいぐいと引き込まれるようなストーリー。無駄のない洗練された文章。描写は端的で、会話のキレも良く、他人の視線を浴びたときの心情や心の機微などの表現もとてもよかった。
本書は、ブラックミックスである安堂ホセさんのデビュー作。期待の新人を、今後も追いかけたい。
紹介本:『ジャクソンひとり』安堂ホセ