Wunderkammer ** 司書の読書ブログ **

神戸で「なごやか読書会」を主催している羽の個人ブログです。

『エクソダス-アメリカ国境の狂気と祈り』

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エクソダス-アメリカ国境の狂気と祈り』は、移民たちが母国を去り、米国で難民申請をするまでの果てしない道のりと、大量の移民が生まれる原因を綴った渾身のルポ。

移民にとって、越境は命懸けだ。

 

例えばメキシコの南、グアテマラホンジュラスエルサルバドルから米国境を目指す移民たちは、家庭内暴力やマラスという青少年ギャング集団、そして貧困を理由に母国を離れる。だが、米国境までの道中は恐ろしい。犯罪組織に狙われ、「野獣」と呼ばれる列車に必死にしがみつき、国境には命を奪う砂漠と川、そしてトランプが建設を強調した壁が立ちふさがっている。

 

もっと南下すると、その危険性は想像を絶する。

 

コロンビアとパナマの間には、地図上の空白地帯「ダリエンギャップ」が存在する。双方の国立公園がある密林で、その密林をガーナやハイチ、バングラデシュパキスタンカメルーン、ペルー、ブラジル、チリ、インドなど世界中の移民が命がけで越境する。マラリア、毒蛇、麻薬密輸組織などに襲われ、命を落とす人も大勢いる。それでも多くの人が、母国で殺されるのを待つより、密林で死ぬほうを選ぶという。

 

次元が違いすぎて身の毛がよだった。

 

日本列島の端から端より長い距離を歩き、米国境を目指す移民たちと、生まれながらにして世界最強とも言われるパスポートを持っているわたしたち日本人。
地球の裏側の彼らの存在が、多くの人々の目に触れ、関心を持たれるようになってほしいし、ならなくてはならない。

 

難民問題解決の糸口は、頑丈な壁を建設することでも、国境警備や麻薬取り締まりを強化することでもない。

 

貧困対策と教育支援だ。

 

世界中の格差に通じるその根本的な原因に、またここでもぶつかったと思った。

 

紹介本:『エクソダス-アメリカ国境の狂気と祈り村山祐介

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