Wunderkammer ** 司書の読書ブログ **

神戸で「なごやか読書会」を主催している羽の個人ブログです。

『死体とFBI 情報提供者を殺した捜査官の告白』

予想以上にドロドロの愛憎劇を描いたノンフィクションで、ページをめくる手が止まらなくなった。

舞台はアメリカのケンタッキー州パイクビル。若きFBI捜査官マークはその初任地へ、最愛の妻と娘とともに引っ越した。

まもなくマークは、知り合いのいない土地で、初めて情報提供者を得た。銀行強盗の悪党について情報を提供してくれる、若くて綺麗だがヤク中で虚言癖のある二児の母スーザンだ。

彼女はマークに情報を提供し、見返りに報酬をもらっていた。やがて彼女はそれだけでは足りなくなり、いつしか精悍な顔立ちのマークにしつこく付きまとうようになる。

 

同じ頃、マークの妻はFBI捜査官を疎ましく思っている何者かに脅されていた。夫の職業柄、敵も多く、家の中にいても警戒しなければいけないような環境に、マークの妻は辛抱強く耐えていた。だが頭の中では警鐘を鳴らしていた。一刻も早く、パイクビルを出なければ。ついにマークの妻の願いは叶う。しかし、悲劇はもうすでに始まっていた-。

 

毎晩自宅にスーザンから電話がかかり、スーザンのことが好きな同僚はマークをやっかむ。夫婦仲は破綻寸前、マークはスーザンと距離を置きたいが、メンヘラの彼女は捨てないでと泣きわめく。

マークはどれほど心を掻き乱されていたことだろう。この二人のこじれた関係が悲劇へとつながるのだが、一瞬の気の迷いや過ちのせいで、二人の人生が音を立てて崩れてゆくのを目の当たりにしてゾッとした。

 

紹介本:『死体とFBI 情報提供者を殺した捜査官の告白』ジョー・シャーキー