中学・高校では親しい友人はできなかった。大学には6年間も通ったものの、そこでも友人はできなかった。摂食障害で生理が7年間止まった。体重はかろうじて30キロを保っていた。研修医になると、アパートと病院を往復するだけの毎日。
そんな著者が精神科医になり、思い切って告白した。精神疾患に罹り、自殺未遂やリストカットをして薬も飲んでいたことを。すると方々から反響があった。
本書では、医者として、患者としての、両方の立場から病院で聞けない話、診察室では見えてこない姿を綴る。
「こころの病は、誰もが人生のどこかで出会う病気」
明るく元気なひとや、立派な会社に勤めているひとが、どうしてうつ病を患い、仕事に来れなくなるのだろう、と前から不思議に思っていた。
わたし自身、気分に波があったり、過呼吸になったり、涙が止まらない状態になったりしたことがある。不眠を相談する為に、カウンセラーの予約をとろうとしたこともある(何週間も先、ではなく、今、聞いてほしかったので予約はしなかった)。
あの時、周囲に、話を聞いたり気遣ったりしてくれるひとがいなかったら、病院で話を聞いてもらうしかなかった。
精神疾患は外傷ではないので、一目ではわからない。一言では説明できない。そんなこころの病を抱えているひとが周りにいて、その人を理解したいと思ったときに有効な本。
➤7つの不思議
1.病名を言われずに、何十年と通院している患者さんがいる
2.何十年も薬を飲んでいるのに、ゴールが見えない
3.精神疾患の原因や薬を見つけるための研究が進んでいない
4.医師から「統合失調症はありふれた病気」と言われる
5.「病気」を自覚できない人もいるのに、病院へ行かないと治療されない
6.思春期の患者さんの入院に適した病院がほとんどない
7.成人した患者さんに対して、なぜ「家族会」が必要なのか
精神を患ってしまった家族、友人、会社の同僚や後輩のことを少しでも理解したいという方は、ぜひ一度手に取ってみてください。
★紹介本★
『病院では聞けない話、診察室では見えない姿 精神科医療の「7つの不思議」』