読書は好き。だけど、ストーリーを追うだけではもう楽しめない。
もしくは、どう解釈すればよいのかわからない物語がある。
もしくは、物語をすらりと読み解けない。
具体的にどういう点に注意を払って読めばいいのか知りたい。
そんなひとは手を挙げてほしい。
挙手、ありがとう。
そんな悩める子羊たちに、救いの手をさしのべたい。
本書では、物語を読み解く38個のカギが掲載されている。全部知りたい方は書籍を読んでいただければと思う。
どんな内容なのかこっそり知りたい方のために、本書から盗んできたカギを10個紹介する。
- 🗝①登場人物の誰に焦点を当てるのか?
主人公だけでなく、友人役や敵役、脇役などの視点で物語世界を眺めることで、新たな世界がひろがる。誰に焦点を当てるによって、まったく別のストーリーが浮かび上がる。
- 🗝②語り手をうたがう
主人公の言葉を鵜呑みしていた。いつも自分を主人公に投影していたから、「信頼できない語り手」がいることを意識して読んだことがなかった。ストレートに読むとつまらない本が、主人公をうたがうことで輝きを帯びはじめる。
- 🗝③その作品の舞台になった時代と書かれた時代の両方を押さえる。また、現代においてその作品がどのような意味をもつか考える
時代背景は解説を読んで知ることのほうが多いかもしれない。舞台になった時代と書かれた時代が隔たっていれば、その間に価値観の変化や歴史的認識の修正があることもある。
- 🗝④より多くの読み方を引き出す
メタファー(比喩・暗喩)を読みとる。
- 🗝⑤小道具に注目する。冒頭で出てきたものが最後にも出てくるなど
→「チェーホフの銃」という言葉を聞いたことがあるだろうか。冒頭で描写された銃が、結末で再び登場するように、何気ないアイテムが実は重要な意味をもっていることがある。何度もでてくるキーワードも注目に値する。
- 🗝⑥物語に無意味な描写はない
→作者は何か意図があって、それを描いている。注意深い読者だけが気づくような何かを。
- 🗝⑦結末まで読んだら、物語の頭に戻って、全体を考える
ブログや読書会で他人に紹介する時は、特にこの方法が有効。
- 🗝⑧自分の人生を投影して鑑賞する
つまり、自分の人生や人生観を通して作品を読む。
正反対の性質をもつもの、主人公とその友人の性格が対照的であったり、敵と味方であったり、そういったものにまず注目する。そして、その相反するもの同士のなかにも共通するテーマがあるかどうか考える。
- 🗝⑩作品内にある言葉や表現を手掛かりに、作中で語られていないものに注目する
不在の人物、わざと隠された手がかり、など。それが語られていないのはなぜか?を考える。
あたりまえのことだが、物語を鑑賞し、「面白かった!」「好き!」または「つまらなかった」「嫌い」という素朴な感想は大切だ。
物語を読む時は、社会科学、自然科学、人文科学、古今東西の思想、自分の経験、あらゆる感情を総動員しよう。カギを暗記するのではなく、物語を味わうために、他の物語を味わうことも大切だ。
この本で紹介されたカギを頭の片隅に置き、まずは物語をじっくり丁寧に読もう。
偶然、ピタリと当てはまるカギ穴を見つけられたあなたは、この上なくしあわせ者だ。
紹介本:『物語のカギ』渡辺祐真(スケザネ)
今週のお題「最近おもしろかった本」