在留資格が「留学」である学生が半数を占める大学、APU。
実はわたし、昨年の春にAPUに行き、キャンパスをこの目で見ました。大学の周りは山以外なーんにもなく、四年間集中して学べそうな環境でした。
『ここにしかない大学 APU学長日記』の中で、出口学長はこんなふうに言われています。
“要なのは、世界に多種多様な人がいると肌で感じること。リアルな体験を通してそれを実感したときに、人は初めて心から寛容になれるし、自分の価値観とは違う思考体系を持つ他人を尊重しないといけないと腹落ちするのです。”
友達が外国籍だと、彼/彼女らの国で起きたニュースが身近な出来事に思える。それこそ本当のグローバリゼーションだと。わたしも大学が外国語学部だったので、国際色豊かな友人たちと過ごした日々を思い返し、共感しました。
大学の特徴としては、新入生に知の巨人・出口学長の「本の選び方」のオリエンテーションがあったり、学長直轄プロジェクト「起業部」でビジネス感覚を学べたりもします。
国際認証を取得し、世界水準の高い教育が受けられることを明確にしている。国際競争力をつけ、優秀な学生を世界中から集めているAPU。
国内の知名度は低くても、まだまだ国際競争力の乏しい日本の大学を牽引してくれる存在だと思いました。
出口学長やAPUを知らない方からすると、ぱっと見「どこかの大学の学長の話」と思われそうですが、実は大学経営のノウハウは企業経営にも応用できるものがたくさんあります。物事を成功に導くための秘訣も分かるので、タイトルに惑わされず読んでもらいたいなあと思います。
そしてもしアナタが読書家なら、本書に掲載されている「読むべき30冊の古典リスト」を読破してみたいと思うでしょう。「人、本、旅」を大切にされている出口学長なので、本について人と話したり、本で読んだ場所を実際に旅したりすれば、ただの「本」好きではなくなり、「人、本、旅」の良さもまた実感できるはず!
知れば知るほど「こんな大学に通ってみたかった!」という思いが強くなる、そんな本でした。
紹介本:『ここにしかない大学 APU学長日記』出口治明
関連本:『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』二宮敦人
東京藝大の美校と音校の学生へのインタビュー、美校生の場合。
Q「絆創膏を持ち歩いてる?」
A「そういう人もいます。ま、僕は瞬間接着剤でピッと止めちゃいますけど」
出口さんは、途方もない読書量と知識量で知られています。現代の賢人です。本書は508ページと読み応えのある一冊です。