「今の自分の気持ちや状態をぴったり表す言葉をもっていない」
そんな風に思ったことが何度もあった。
愛想笑いばかりする自分、言葉の足りない自分が、嫌で、変えたくて、10代後半から「ない言葉」を漁るように本を読み始めた。
この本を読んで、そんな昔のことを唐突に思い出した。
“たくさん「ある言葉」というのは目立つから、すぐに気がつきやすい。対して、「ない言葉」は見つけにくい。そもそも「ない」のだから、気がつきにくいのは当たり前だ。でも、そうした「ない」ものに想像力を働かせることも必要だ。”
SNS上には、人を侮辱したり、貶めたり、罵ったり、蔑んだりする言葉が溢れていて、わたしたちは日々、嫌でもそれを目にする。
自分の中に「ない言葉」を本気で探したいのならば、それはきっと、昔の文学作品の中だったり、普段出会わないような誰かの言葉の中にある。
「うまく言葉でまとめられないものの尊さ」というものにどうしようもなく惹かれ、なんとかそれを言葉で表したいと願う著者の思いがカタチになった『まとまらない言葉を生きる』という本。
過去のわたしのように、言葉のコップがからっぽだと感じる読者に、届くといいと願う。
紹介本:『まとまらない言葉を生きる』/荒井裕樹