Wunderkammer ** 司書の読書ブログ **

神戸で「なごやか読書会」を主催している羽の個人ブログです。

『僕は死なない子育てをする』

突然だが、わたしは今、妊娠中である。

 

子育てについて情報収集をするなかで、育児本もよく読むようになった。そして「発達障害」をもつ「パパ」が書いた本に出会った。

 

人間は、就職、結婚、貯金、両家との関係維持、そして妊娠出産と順調にステップを踏んで、ようやく子育てに至る。

その一本道の途中を抜かしたり、その過程で社会や周囲の理解を得られない場合を考えてみよう。きっと一人で悩みを抱え込み、生きるのが辛くなるだろう。

 

二三歳で結婚し、二四歳で父親になった著者。夫婦仲が悪化し、別居寸前だった二六歳の時、発達障害が発覚した。一旦休職した職場に復帰したものの退職せざるを得ず、「いつか妻に借りを返したい」と考えていた。

 

のちに、劣悪な労働環境で働いていた保育士の妻も折れ、退職してしまう。

 

絶望的な状況下で、「夫婦は、どちらかが「主人」になる“主従”の関係ではなく、互いにサポートし、ケアし合う関係」に自然となっていった。

 


一時は崩壊寸前だった家族は、自分たち家族にとって大切なことは何かを見直すことで、再びチームになった。「死にたい」と思っていた著者は、「死ななくてよかった」と思えるようになった。

 

「現代の日本で“普通に”子育てをしていくのは難しい」と著者は言う。


誰もが自分の「父親像」「母親像」を思い描く。でもそんな周りが押し付けてくる/自分が理想とする像は壊してもいい。自分を追い詰めないで。死んだら楽になれると一瞬でも考えてしまったら、まずはゆっくり休もう。そう思えただけでも、この本を読む価値はあった。

 

 

わたしも子どもが生まれたら、自分が死なない子育てをしたい。

 

 

紹介本:『僕は死なない子育てをする』遠藤光太