Wunderkammer ** 司書の読書ブログ **

神戸で「なごやか読書会」を主催している羽の個人ブログです。

『スマホ脳』と『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』

あなたは朝起きてから寝るまでに、どのくらいの時間スマホを触っているだろうか?

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スマホ脳』によると、私たちは1日に2600回以上スマホを触り、平均すると10分に一度はスマホを手に取っているという。

 

自分はスマホに依存していない。そう信じたい。

 

だが、朝起きるとすぐにスマホをチェックし、歯磨きをしながらニュースを読み、通勤中に電車内でゲームをし、仕事の休憩時間にSNSを見て、帰りの電車でまたSNSとゲームをし、そして、家に帰ってから寝る直前までスマホを常に気にしている。

 

確かに、何かに集中している時以外は、スマホを触っていることが多いかもしれない。

誰かからLINEが来ていないか気になる。SNSを更新したくなる。次々と新しい情報が欲しくなる。

それは、脳は新しいものが大好きだからだ。

 

報酬を得るための行動を促すドーパミンは、SNSに「いいね」がついているかも?最新の情報が得られるかも?といった期待を次々と生み出す。ドーパミンが放出され続けた結果、わたしたちは一日にトータルして何時間もスマホを使ってしまう。

 

満足のいく報酬は、毎回得られなくてもいい。むしろ、得られないからこそ「次は得られるかも」という期待が生まれ、依存度が高まる。

 

SNSの開発者は、その辺りの報酬システムを詳しく研究し、脳が不確かな結果を偏愛していることや、どのくらいの頻度が効果的なのかを知っている。

 

デジタルネイティブである幼い子どもたちは、脳がまだ十分に発達する前に、デバイスを与えられる。
スウェーデンでは、乳児の4人に1人がインターネットを使っている。2歳児は半数以上、7歳児のほとんどが、インターネットを毎日利用している。11歳児の98%が自分のスマホを持っている。これには驚いた。

 


先日、『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』を読んだ。

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そこには、著者が考える、赤ちゃんから10歳までの子どもたちの理想的な読む生活について書かれていた。

 

デジタル媒体で読む場合と紙媒体で読む場合とでは、脳で使われる回路が異なるということは、あまり知られていない。

デジタルで読むと、斜め読みや飛ばし読みが増え、細部を見落としたり物語の順序が曖昧になったりするという研究結果がある。

そこで、2歳までは親が読み聞かせを、2〜5歳は言葉の意味が理解できるように読み聞かせを、5〜10歳までは自分で読み、自分自身の考えを持てるようにすることが大事だという。もちろん、紙の本で。

デジタルでは、静かな目で本を深く読み、感情を揺さぶられたり批判的思考をしたり洞察したりすることがしづらくなるからだ。

幼い子どもがデジタル媒体のみで「読字脳」を発達させると、深い読みができなくなる。紙とデジタル両方の特性を取り入れて、脳を発達させることを提案している。

 

個人的に思うのは、本は大きさや手触りなどがどれも異なるが、タブレット上では、どれも同じ大きさ、同じ手触りになり、「思い出の絵本」といって思い出す絵本がデジタルというのはなんだか味気ない。

 

また、両方の著者が、スマホが読書に与える影響を憂慮しており、共に、スマホで読むことに慣れてしまったために昔より紙の本に集中できなくなった、と言っている。

 

 

果たして、あなたは今、何時間も集中して読書ができるだろうか?それとも、時々スマホをチェックしながら、読書をしているだろうか?

 

わたしは少し考えて、本を読み終えるまでは、スマホを離れたところに置くことにした。


*追記*
上に挙げた本は2冊とも、脳科学についての本だ。
うつや不眠、ストレスなどへの影響については『スマホ脳』を、文字を目で追う時の脳の神経についてもっと詳しく知りたい人には『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』をオススメしたい。

 

紹介本:『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン
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紹介本:『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』メアリアン・ウルフ

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